古文書の読み方
書道歴55年のプロが語る草書が読めても意味がわからない理由と解決法
こんにちは、鉄筆堂の藤井直樹です。
書道歴55年、筆耕業35年の経験を持つ私のもとに、
最近「江戸時代の古文書を解読してほしい」という依頼が
増えています。
今回は、古文書解読の実際の難しさと、
その解決方法について詳しくお話しします。
古文書解読依頼が急増中！
書道経験者でも直面する課題とは
書道を長年続けてきたことがきっかけで、
ある日から「江戸時代の古文書（証文など）を解読してほしい」と、
さまざまな方から依頼をいただくようになりました。
確かに書道経験があるため、簡単な草書なら読むことができます。
しかし実際に古文書解読に取り組んでみると、
文字は読めても文章の意味がわからないという壁に
ぶつかることが多いのです。
古文書解読が困難な理由：江戸時代特有の表現と崩し字の存在
古文書解読が難しい主な理由の一つが、
**「申し候（もうしそうろう）」「存じ上げ候（ぞんじあげそうろう）」
といった当時特有の表現や崩し字（くずしじ）**の存在です。
江戸時代の文書には「一音＝一文字」という現代の概念がありません。
二文字以上をまとめて一つの言葉として表現する書き方が一般的でした。
たとえば「申し候」や「存じ上げ候」などは、
現代の丁寧語や敬語にあたりますが、
古文書ではかなり崩された形で書かれているため、
現代人にはとても読みにくいのが現状です。
原文そのままでは理解困難！現代版翻訳の必要性
古文書の原文をそのまま掲載することも考えましたが、
以下の理由から現実的ではありません：
書き手の個人的な癖が多く、見間違いがよく発生する
紙の損傷が激しく、汚れなのか文字なのか判別困難
現代人には理解が困難な表現が多数存在
そのため、私は原文を読み取り、
清書して現代の人にも理解できるような形に
翻訳する方法を採用しています。
興味のある方には、ぜひ生の古文書にも挑戦していただきたいと思います。
古文書解読に必要な必需品4選
古文書解読を始めるには、
最低でも以下の道具を揃えることをお勧めします：
1. 解読指南書
「申し候」「存じ上げ候」といった
江戸時代特有の表現や崩し字の
注意点が詳しく解説されています。
古文書解読の基礎知識を
身につけるために必須のアイテムです。
2. 行書事典
古文書には万葉仮名や行書、草書が多用されています。
これは当時の公用語が万葉仮名や行書、草書だったためです。
正確な解読のためには行書事典が欠かせません。
3. 仮名辞林
ひらがなやカタカナにも数多くの崩し方が存在します。
解読できない場合は推定して仮名辞林を活用し、
どのような筆遣いをしているかを探る必要があります。
4. 崩し字事典
仮名辞林ほどではありませんが、
多くの資料を持っていることで様々な場面で役立ちます。
古文書解読の精度向上には必要不可欠な道具です。
古文書解読で忘れてはいけない重要なポイント
ここで忘れてはいけないのが、
日本の古文書は時代とともに変化しているということです。
漢字は中国から輸入されて私たちが使用していますが、
何百年もかかって変化してきました。
また言語も、現在私たちが話している言葉と同様に、
その時代ごとに内容が変わっています。
例えば、現代人が戦前の人と会話をすると「なんか通じないな？」と
感じることがありませんか？
文章も同様で、時代ごとに変化しているものなのです。
まとめ：古文書解読は専門知識と経験が必要な技術
江戸時代の古文書解読は、
単に草書が読めるだけでは十分ではありません。
当時の言語表現、崩し字の知識、
そして適切な道具と経験が必要な専門技術です。
古文書解読にご興味のある方、
または解読依頼をお考えの方は、
まず基本的な道具を揃えることから始めてみてください。
そして何より、継続的な学習と実践が上達への近道となります。
書道歴55年、筆耕業35年の経験を活かし、
これからも多くの方の古文書解読の
お手伝いをさせていただければと思います。
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