コラム

書の心を伝える道
|55年の書道人生が教える筆の魅力と継承の喜び
はじめに:筆と墨の道を歩む
半世紀以上にわたり筆と墨の世界に身を置いてきた藤井直樹です。
書道歴55年、筆耕歴25年の経験から、
文字に命を吹き込む喜びと技を皆様にお伝えしたいと思います。
江戸川区に開設した「鉄筆堂」では、
書の伝統を守りながらも現代に息づく文字文化の継承に努めています。
今回は長年の書道経験から得た学びと、文字を通じて心を伝える秘訣をお話しします。
書道との出会い|少年時代に芽生えた文字への憧れ
私の書道との出会いは10歳のときでした。
祖父の書斎で初めて本格的な筆を手に取ったあの感覚は今も鮮明に覚えています。
墨の香り、和紙の感触、筆先が生み出す線の美しさ。
デジタルでは決して表現できない「一期一会」の文字との出会いが、
私の人生を決定づけました。
書道の世界には、単なる技術だけでなく、精神性や哲学が込められています。
「書は人なり」という言葉がありますが、まさに文字には書き手の人格や心が表れるのです。
デジタル全盛の現代だからこそ、手書き文字に宿る温かみや個性が再評価されています。
筆耕の技|25年の経験が教える文字表現の真髄
筆耕とは、依頼に応じて文字を書く仕事です。
表札や看板、賞状や招待状など、様々な場面で活躍します。
25年間、数多くの筆耕を手がけてきた経験から言えることは、
文字には「魂」が宿るということ。同じ「おめでとう」という言葉でも、
結婚祝いと合格祝いでは込める思いが違います。
その場にふさわしい文字表現を探求し続けることが、筆耕の醍醐味です。
特に私が大切にしているのは「余白の美」です。
文字と余白のバランスが整ったとき、
そこに静寂と雄弁が共存する日本文化特有の美意識が生まれます。
一文字一文字に命を吹き込み、紙面全体で調和を奏でる。それが真の筆耕技術なのです。
書道と教育|後進育成の喜び
高校教師や会社の後輩指導を通じて気づいたことは、
書道には人を育てる力があるということです。
集中力、忍耐力、観察力、そして自己表現力。
これらはすべて書道を通じて培われる能力です。
特に現代の子どもたちは、キーボードやスマートフォンでの文字入力が主流となり、
手書き文字を書く機会が減少しています。
だからこそ、書道教育の価値は高まっているのです。
一人ひとりの個性を尊重しながらも、
基本をしっかり教えることが私の指導方針です。型を学びながらも、
最終的には自分らしい表現を見つけることができたとき、書は最も美しく輝きます。
デジタル時代における書道の価値
スマートフォンやパソコンが普及した現代社会において、
「なぜ今、書道なのか」と問われることがあります。
しかし、デジタル化が進めば進むほど、
アナログな手書き文字の価値は高まると私は確信しています。
機械的な完璧さではなく、
人間らしいゆらぎや個性を持った文字には、
心を動かす力があります。結婚式の招待状や感謝状など、
特別な場面では今でも手書き文字が求められるのはそのためです。
また、書道には心を落ち着かせる瞑想的な効果もあり、
ストレス社会の現代人にとって心の安らぎをもたらします。
伝統と革新|「鉄筆堂」が目指すもの
「鉄筆堂」という名前には、鉄のように強い意志で筆を執り、
書の道を究めたいという思いを込めました。
江戸川区で開いた小さな教室ですが、
ここから書道の素晴らしさを広げていきたいと考えています。
書道は古い伝統ですが、決して過去の遺物ではありません。
現代的なデザイン感覚と伝統的な書法を融合させた作品や、
日常生活に溶け込む実用的な書など、
新しい可能性を探求しています。
また、SNSを通じて書道作品を発信することで、
若い世代にも書の魅力を伝えていきたいと思っています。
書を学ぶ方へのメッセージ
書道を始めたいと思っている方、また書道を学んでいる方へ。
書の世界は、始めれば始めるほど深く、
学べば学ぶほど奥深い魅力に満ちています。
最初は筆の持ち方から始まる基礎練習が続きますが、
その先には文字を通じて自分を表現する喜びが待っています。
55年の書道人生を振り返って思うことは、
書は一生の友だということ。年齢を重ねても、
体力が衰えても、
心の内側から湧き出る思いを文字に託すことができる。
それが書の最大の魅力なのかもしれません。
おわりに:文字文化の継承のために
日本の誇るべき文化である「書」。
この素晴らしい伝統を次世代に伝えていくことが、
55年書道に携わってきた者としての使命だと感じています。
「鉄筆堂」では、これからも書の技術だけでなく、
その精神性や文化的背景も含めて伝えていきたいと思います。
文字を書くことは、自分の存在を紙面に刻むこと。
その一筆一筆に込められた思いが、
読む人の心に届くとき、文字は単なる記号を超えた芸術となります。
そんな「書の心」を、これからも大切に守り、伝えていきたいと思います。
皆様も、ぜひ一度筆を手に取り、
文字を書く喜びを体験してみてください。
きっと新しい自分との出会いがあるはずです。
【筆者プロフィール】
藤井直樹(ふじい なおき)
鉄筆堂主宰。書道歴55年、筆耕歴25年。
筆耕会社や看板屋からの依頼で数多くの作品を手がける。
高校教師や会社後輩の指導経験を活かし、
2025年江戸川区に書道塾「鉄筆堂」を開業。
書くことはもちろん、教えることにも定評がある。
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